ZEH・GX志向型住宅は本当にお得?〜後悔しない住まい選びのために〜

「今はZEH(ゼッチ)住宅が標準なんですよ」
「補助金も出ますし、光熱費も安くなります!」
住宅展示場でこんな説明を受けたこと、ありませんか?

最近では高性能住宅という言葉をあちこちで聞くようになり、なんとなく「それが当たり前」と感じてしまう方も多いと思います。
でも実際のところ、「本当にお得なの?」「うちの家計でも大丈夫?」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。

今回は、ファイナンシャルプランナー(FP)の視点から、ZEH・GX志向型住宅をお金の面からわかりやすく整理してみたいと思います。

「標準仕様」の裏側 ―なぜZEHが当たり前になったのか?

近年の新築住宅では、「ZEH仕様」や「耐震等級3」が標準仕様として位置づけられることが一般的になっています。

一見すると、消費者が高性能住宅を求めた結果、自然に標準化が進んだように思えますが、実際にはそうではありません。
大手ハウスメーカーなどが参加するワーキンググループが中心となり、性能基準の採用について国に提言を行ってきました。
その中から国が採用し、制度として位置づけたものが「標準」として定着していったのです。
つまり、住宅性能の標準化は、消費者のニーズだけでなく、業界側の動きにも大きく影響を受けているといえるでしょう。

そして、「標準仕様ですから」と言われると、もう外せないもののように感じてしまう…。
実際、「ZEH仕様を外せば200万円くらい安くなる」と言われる一方で、「うちでは対応できません」と言われるケースも。
標準という言葉の裏側には、こうした業界の事情も隠れているのです。

補助金は出る。でも「お得」とは限らない

ZEHやGX志向型住宅の大きな魅力として、よく「補助金」や「税制優遇」があげられます。たしかに国は、CO₂削減のためにこうした住宅を後押ししています。

 たとえば

  • GX志向型住宅:補助金は最大160万円程度
  • ZEH住宅:補助金は55万円〜100万円前後

金額だけ見ると「結構大きい!」と思いますよね。
でも、その一方で、ZEH仕様にするために必要な断熱材の強化や高性能設備の導入などで、建築費が1,000万円近く上がることもあります。

つまり、「補助金で得する」というよりも、「補助金をもらっても価格上昇を吸収しきれない」のが現実。
「補助金がある=お得」というわけではない、という点は冷静に見ておく必要があります。

メリットも、もちろんあります!

ここまで読むと「じゃあ、ZEHやGX志向型住宅はやめたほうがいいの?」と思われるかもしれません。
でも、そんなことはありません。
高性能住宅にはちゃんとメリットもあります。

たとえば

  • 夏は涼しく、冬はあたたかくて快適!
  • 冷暖房効率が良く、光熱費を抑えられる
  • ヒートショックなど健康リスクの軽減
  • 太陽光や蓄電池があれば停電時にも安心
  • 環境にやさしい

特に、在宅時間が長い家庭や、健康・環境を重視したい方にとっては、快適さという点で金額以上の大きな魅力があります。

ただし、その快適さを感じる時間が少ない(共働きなどで昼間ほとんど家にいない)場合や、長期的なメンテナンス費用を考慮していない場合は、コストパフォーマンスが下がる可能性もあるということです。

メンテナンス費用という将来コストも忘れずに

「初期費用は高いけど、光熱費が安くなるからトータルでお得」
よく聞くフレーズですが、ここにも少し注意が必要です。

ZEHやGX志向型住宅には、太陽光パネル・蓄電池・高性能な換気システムなど、さまざまな設備が使われています。でも、それらには寿命があります。
太陽光パネルは数十年持つといわれていますが、その周辺機器(接続ケーブルやパワーコンデショナー)・蓄電池などは15年経過くらいから補修、場合によっては交換などが必要になるケースもあります。また、発電効率や蓄電能力も一生涯、新品の能力を維持できるわけではありません。

つまり、「光熱費が安い=一生コストがかからない」ではなく、将来のメンテナンス費用を後回しにしているだけなんです。
この視点を見落とすと、「思ったより得じゃなかった…」ということにもなりかねません。

まとめ

ZEHやGX志向型住宅は、確かに環境にも家計にもやさしい仕組みです。
でも、「標準」「補助金」「お得」という言葉に流されて決めてしまうと、後から「うちには合わなかった…」ということも。

大切なのは、「自分たちのライフスタイルと家計に合っているか」を見極めることです。

購入前にFPに相談して、ライフプランと家計を整理してみると、「本当に必要な性能なのか」「どこまでなら無理なく投資できるのか」が数字で見えてきます。ZEHやGX志向型住宅は良い・悪いではなく、合う・合わないの問題。
流行や補助金に左右されず、自分たちにちょうどいい選択を見つけていきましょう。